眼底検査&眼圧検査とは?40歳を過ぎたら定期的に受けたい眼を守る検査
人は普段の生活で知覚する情報の8割以上を視覚から得ていると言われています。加齢に伴って視機能は低下しやすくなりますが、年を重ねても生活の質を維持するには、よい視力を保つことが大切です。今回は、年齢とともに増えてくる目の病気を早期発見するのに役立つ眼底検査と眼圧検査について、詳しく解説します。
目次
定期的な目の検診が重要なのは、なぜ?
視覚には、物を見分ける能力である「視力」と、見える範囲の広さを指す「視野」という2つの要素があります。視力や視野の障害が起こり、日常生活を送る上で困難がある状態を視覚障害といいますが、視覚障害を起こす割合は高齢になるほど高くなります。
視覚障害の原因となる病気の第1位は、緑内障(40.7%)です。次いで第2位が網膜色素変性症(13.0%)、第3位が糖尿病網膜症(10.2%)、第4位が黄斑(おうはん)変性(9.1%)となっています(※1)。遺伝性の病気である網膜色素変性症以外は、早期発見・早期治療によって進行を遅らせ、失明を防ぐことができるようになってきました。
また、視覚障害の原因としては多くないものの、白内障や網膜剥離も視力を低下させる注意したい病気です。緑内障や白内障は40代から、黄斑変性や網膜剥離は50代から発症リスクが高くなってきますが、発症初期は自覚症状に乏しく、自分では気づかないこともあります。そのため、早期に発見するには定期的に目の検診を受けることが重要なのです。
40歳から気を付けたい目の病気(※2)
- 緑内障
眼圧(眼球内の圧力)が高くなることによって視神経が障害され、視野が狭くなったり、部分的に見えなくなったりする病気。40歳以上の日本人の20人に1人が緑内障を発症しているといわれています。視野が欠けても、初期の段階ではほとんど気づきません。
- 白内障
加齢によって水晶体が白く濁り、目がかすんで見えにくくなる病気。水晶体の濁りは一種の老化現象であり、誰もが白内障になる可能性がありますが、進行の程度は個人差が大きいといわれています。早い人では40代で初期症状が現れることがあります。
- 黄斑変性
網膜の中心部である黄斑に異常が生じ、物がゆがんで見えたり、視力が低下したりする病気。加齢に伴って起こる黄斑変性を加齢黄斑変性といい、黄斑変性の大部分を占めます。
- 網膜剥離
網膜に孔(あな)が開いてしまい、眼球の中にある液状の硝子(ガラス)体がその孔から入り込んで網膜がはがれ、視野が欠けたり視力が低下したりする病気。外傷などで起こることもありますが、50歳以降では加齢による眼内の変化によって突然生じることも少なくありません。
病気の早期発見に役立つ眼底検査と眼圧検査
職場などで受ける健康診断で行う目の検査は、視力検査のみの場合がほとんどです。しかし、加齢に伴って増えてくる目の病気を早期発見するには視力検査だけでは十分とはいえません。自覚症状に乏しい初期の段階で病気を見つけるには、定期的に眼底検査と眼圧検査を受けることが大切です。
眼底検査とはどんな検査?
眼の奥には重要な神経や血管があり、そこを観察し、調べることでさまざまな病気を見つけます。
検査の内容・目的 | 眼底鏡や眼底カメラを使って、眼底(目の奥)の血管や視神経、網膜などの状態を調べる検査 |
---|---|
検査で分かること | ・視神経乳頭(視神経が束になっている部分)のへこみの状態 ・網膜の状態 ・出血の有無 ・動脈硬化や高血圧、糖尿病による血管の変化 |
見つけられる主な病気 | 緑内障、黄斑変性、網膜剥離、糖尿病網膜症、網膜血管の動脈硬化・閉塞 |
検査のメリット | ・目や全身の病気の早期発見につながる情報が得られる ・眼底の血管は人の体で唯一、直接観察できる血管であり、この血管の状態を観察することで高血圧や糖尿病などの動脈硬化を引き起こす病気の状態を推測できる ・定期的に検査を受けることで病気の経過観察ができる |
検査のデメリット | ・散瞳薬(瞳孔を広げる点眼薬)を点眼する場合、検査に30分程度時間がかかる ・散瞳薬を使用した場合、検査終了後4~5時間は車や自転車の運転ができない |
眼圧検査とはどんな検査?
眼圧とは、眼の内側から外側にかかる圧力のことです。眼圧が高いと緑内障などを引き起こす原因となるため、眼圧が正常かどうかを調べます。
検査の内容・目的 | 裸眼の状態で目の表面に空気を吹きつけて、眼球内の圧力を測定する検査 |
---|---|
検査で分かること | ・眼球の中は房水という液体によって圧力が保たれている。房水は眼球内を循環しているが、何らかの原因で房水の排出路が詰まったり働きが悪くなったりすると、眼球内に房水が溜まり、眼圧が上昇する。この眼圧の変化を測定することで、目の病気の有無を確認する ・眼圧の正常値は10~21mmHgとされているものの、個人差がある |
見つけられる主な病気 | ・眼圧が低い場合:網膜剥離 ・眼圧が高い場合:緑内障、高眼圧症 |
検査のメリット | ・検査にかかる時間が短く、検査結果がその場で分かる |
検査のデメリット | ・緑内障の中には眼圧が正常にもかかわらず発症する「正常眼圧緑内障」があり、眼圧検査だけでは発見できないこともある |
当クリニックでは、すべてのオリジナル人間ドックコースで眼底検査、眼圧検査を実施しています。また、各種健康診断のオプションとして検査を追加することも可能です。
加齢に伴う目の変化を見逃さないために、セルフチェックを!
加齢に伴って身体の様々な機能が低下することで健康障害に陥りやすい状態を「フレイル」といいますが、その中でも目に関するフレイルである「アイフレイル」の重要性が注目されています。
年をとると、水晶体が濁る、網膜の血管がもろくなるなどの目の構造的な変化や、ピントを調整する力が低下するなどの機能的な変化が生じ、目の不調を起こしやすくなります。アイフレイルとは、加齢に伴って目が衰えてきたところに、糖尿病や高血圧といった病気や喫煙、低栄養、紫外線などの外的なストレスが加わることで、本来持っていた視機能が低下した状態を指します。白内障や緑内障、加齢黄斑変性はアイフレイルと関連する病気です。
アイフレイルが進行して重度の視覚障害に陥ってしまうと回復は難しくなり、自身で生活することが困難になることから、健康寿命も短くなります。早期に発見できれば、適切な予防・治療を行うことができ、進行を遅らせ、症状を緩和させることが可能です。
目の変化に早く気づくために、定期的に目の検診を受けるとともにセルフチェックを行うようにしましょう。日本眼科学会など関連団体が、アイフレイル対策の啓発活動のために立ち上げているアイフレイル啓発公式サイトでは、アイフレイルのセルフチェックリストを公開しています。
アイフレイルチェックリスト(※3)
チェックリストで当てはまる項目が2つ以上ある場合は、一度眼科を受診することをおすすめします。
また、同サイトでは、チェックリスト以外にも、普段の生活では気が付きにくい視野の欠け(緑内障の可能性)などをチェックできるツールも公開しています。
眼の病気は自覚症状無く進行している場合もあります。目の違和感や不調を覚えたときにはもちろんのこと、自覚症状がない場合でも40歳を超えたら定期的に検査を受けることが大切です。
参考文献
- (※1)Matoba R, et al.: Jpn J Ophthalmol. 2023; 67: 346-352.
- (※2)日本眼科医会, 目の定期検査のすすめ
- (※3)アイフレイル啓発公式サイト
人間ドックコース・料金
当クリニックでは皆さまのご要望に柔軟に対応できるよう、多様なコースをご用意しています。
どのコースを受けたら良いかわからない場合は、お気軽にご相談ください。
記事監修
森山 紀之
医療法人社団進興会 理事長
1973年千葉大学医学部卒。
元国立がん研究センター がん予防・検診研究センター センター長、東京ミッドタウンクリニック常務理事 兼 健診センター長を経て、現職。