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知っておきたい膵臓がんの原因と初期症状

公開日:2024.09.30

死亡率が増加し続ける膵臓がん

膵臓(すいぞう)がんは治療によって完治することが難しいがんであり、早期の段階で発見することが重要です。特に、膵臓がんの発症リスクが高いと考えられる場合は、定期的に検査を受けてがんの有無を確認していくことが推奨されます。今回は、膵臓がんの発症リスクを高める要因や初期症状について詳しく解説します。

死亡率が増加し続ける膵臓がん

膵臓がんは、高齢になるほど発症しやすくなるがんです。人口の高齢化に伴い、膵臓がんの罹患数(新たにがんと診断される人の数)や死亡数は急速に増加しています。日本人に多い肺がんや大腸がん、胃がんでは死亡率が減少傾向にある一方、膵臓がんの死亡率は増加しており、全てのがんの中で死亡数は第4位となっています(※1)。

膵臓がんの死亡率が高い理由は、治療によって完治することが難しいためです。膵臓には胃や大腸などのように筋層と呼ばれる筋肉の層がないため、がんが膵臓の外に広がりやすいという特徴と、他のがんに比べて膵臓がん自体の悪性度高いことがあります。

そのため、膵臓がんが発見された段階ですでに他の臓器に転移していたり、手術ができないほど進行していたりすることが少なくありません。膵臓がんは治療の難しさから、「21世紀に取り残されたがん」などといわれることもあります。

膵臓がんの原因は分かっている?

膵臓がんの原因は分かっている?

膵臓がんの原因は、いまだ明らかになっていません。しかし、発症リスクを高める様々な危険因子があることは分かっています。主な危険因子として、血縁者に膵臓がんになった人がいること、糖尿病や肥満、慢性膵炎などの持病、喫煙や大量飲酒などが知られています(※2)。

膵臓がんの発症リスク:1~7

  • 発症リスク1:血縁者に膵臓がんになった人がいる

血縁のある家族に膵臓がんになった人がいる場合、膵臓がんを発症するリスクは1.5~1.7倍と言われています。また、両親や兄弟姉妹、子ども(第1度近親者)のいずれかで膵臓がんになった人が2人以上いる場合を「家族性膵がん」といい、通常よりも膵臓がんになるリスクが高いことが分かっています。
「家族性膵がん」の場合、近親者に膵臓がん患者さんが多くいるほど膵臓がんの発症リスクは高まり、第1度近親者に膵臓がん患者さんが1人いる場合は4.5倍、2人では6.4倍、3人以上では32倍といわれています。


  • 発症リスク2 糖尿病

糖尿病の持病があると、膵臓がんを発症するリスクが1.7~1.9倍高くなるといわれています。特に、糖尿病を発症して間もない時期のほうが膵臓がんの発症リスクが高く、糖尿病発症後1年未満のリスクは5.4倍となっています。


  • 発症リスク3 肥満

BMI(体格指数)が30 kg/m2以上の人が膵臓がんを発症するリスクは1.3~1.4倍といわれています。肥満度が高いほどリスクも高くなることが知られており、女性でBMIが40以上になると発症リスクは2.8倍まで上昇します。

 

  • 発症リスク4 慢性膵炎

膵臓に繰り返し炎症が起こる慢性膵炎の持病があると、膵臓がんのリスクが13.3~16.2倍高くなるといわれています。慢性膵炎は、男性では飲酒が原因で発症することが多く、禁酒をした上で適切な治療を行うことにより、膵臓がんの発症を予防できることが確認されています。

 

  • 発症リスク5 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、膵嚢胞

IPMNとは、膵管の中に粘液がたまって膵管の拡張や嚢胞(袋状のもの)ができる病気で、膵臓がんに進行することがあるといわれています。また、IPMNとは診断されない膵嚢胞がある場合も、通常よりも膵臓がんの発症リスクが高まることが知られています。

 

  • 発症リスク6 喫煙

喫煙習慣があると、膵臓がんの発症リスクが1.7~1.8倍高まります。また、糖尿病や肥満などがある人が喫煙をすると、膵臓がんのリスクがさらに上昇するといわれています。

 

  • 発症リスク7 飲酒

適量の飲酒は膵臓がんのリスクにはなりませんが、1日のアルコール摂取量が24g以上(ビールなら600mL以上、日本酒なら200mL以上に相当)になると、膵臓がんの発症リスクがやや高まるとされています。

 

膵臓がんに特有の初期症状はある?

膵臓がんはがんが小さいうちは症状が現れにくく、症状を早期発見の指標とするのが難しいがんです。症状が現れたとしても、膵臓がんの初期症状として特有のものはありません。

膵臓がんの主な症状に、腹痛、体重減少、食欲不振などがあります。十二指腸に接する膵頭部(膵臓の右側のふくらんだあたり)にがんができた場合、がんによって胆管がふさがれ、胆汁が排出されなくなることで黄疸(白目や皮膚が黄色くなり、皮膚がかゆくなる症状)が生じることがあります。また、がんが胃や十二指腸へ広がると、吐き気や嘔吐などの症状が現れることがあります。

一方、膵頭部以外の部分にがんができた場合は、症状が現れないまま大きくなり、腹部の腫瘤(かたまり)や背中の痛みで気づかれることが少なくありません。また、糖尿病の急な発症や悪化をきっかけに膵臓がんが見つかることもあります。

膵臓がんの予防・早期発見につなげるには

膵臓がんの予防・早期発見につなげるには

膵臓がんの発症リスクを高める要因の中には、生活習慣が関係するものがあります。節度のある飲酒を心がけ、バランスのよい食事と適度な運動で適正な体重を維持することが大切です。喫煙習慣のある人は、まず禁煙に取り組みましょう。

治療の難しい膵臓がんは、ステージ0やステージⅠの早期の段階で発見することが重要です。膵臓がんに対しては国の指針にもとづいて実施される対策型のがん検診がないため、人間ドックが有用と考えられます。特に、血縁者に膵臓がんになった人がいる場合や膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、膵嚢胞などの病気を指摘されたことがある場合は、定期的に検査を受けることが推奨されます。また、膵臓がんが原因で糖尿病を発症することもあるため、糖尿病の診断時には膵臓がんの検査も受けておくとよいでしょう[※2]。

膵臓がんの検査法には、腹部超音波(エコー)検査や腹部CT検査、腹部MRI検査などがありますが、こうした検査は一般的な人間ドックのメニューには含まれていない場合もあるため、検査が含まれるコースやオプションを選択する必要があります。

膵臓がんの発症リスクを高める要因のうち、当てはまるものが1つでもある場合は、一度人間ドックで膵臓の状態をチェックしておくのがおすすめです。人間ドックのプランや検査内容について詳しく知りたい方は、ぜひお気軽に当クリニックにお問い合わせください。


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参考文献

  • (※1)国立がん研究センター, がん情報サービス 最新がん統計
  • (※2)日本膵臓学会 膵癌診療ガイドライン改訂委員会, 膵癌診療ガイドライン 2022年版

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当クリニックでは皆さまのご要望に柔軟に対応できるよう、多様なコースをご用意しています。
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森山 紀之

医療法人社団進興会 理事長

1973年千葉大学医学部卒。
元国立がん研究センター がん予防・検診研究センター センター長、東京ミッドタウンクリニック常務理事 兼 健診センター長を経て、現職。

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