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尿検査はなぜ重要?毎年受けるからこそ知っておきたい尿検査でわかること

公開日:2024.12.19

尿はどのように作られる?

健康診断で検査項目の一つになっている尿検査。尿検査は、腎臓の病気を早期発見することを目的に小・中学校から実施され、会社や自治体による健康診断でも尿検査は必須項目となっているので、多くの人が検査を受けたことがあると思います。
今回は、尿検査で調べられることや尿検査で分かる病気について詳しく解説します。

尿はどのように作られる?

尿は、腎臓によって血液がろ過されて作り出されます。血液には、全身の臓器に栄養素や酸素を運ぶ役割だけでなく、代謝によって作られた老廃物や有害物質を集めて腎臓に運ぶ役割もあります。1つの腎臓には「ふるい」のような構造をしている糸球体(しきゅうたい)が約100万個あり、全身を巡ってきた血液がこの糸球体を通ると不要なものがろ過され、原尿(おしっこの元)が作られます。
健康であれば、赤血球やタンパク質などはろ過されず、きれいになった血液が腎臓から全身へと戻ります。

尿はどのように作られる?

原尿の中には、ブドウ糖やアミノ酸、様々なミネラルなど体に必要な栄養素がたくさん含まれているので、糸球体から出て尿細管を通るときに必要な成分が再吸収されます。1日に作られる原尿の量は約150Lにもなりますが、実際に尿として排出されるのは1.5L程度なので、原尿の99%は再吸収されるかたちです。いったん排出したにも関わらず再吸収するというのは一見すると非効率にも感じられますが、「体にとって必要な成分を必要な量だけ選択的に再吸収する」という確実な方法を取ることで、体内の水分量やミネラルのバランスが維持されています。

再吸収を経て作られた尿は、尿管を通って膀胱に蓄えられ、最後は尿道を通って体の外に排出されます。
尿を採取してその中に含まれている成分を調べる尿検査をすれば、腎臓のろ過機能が低下していないか、腎臓や膀胱などの泌尿器系の臓器に異常がないか、糖尿病などの病気がないかなど、多くのことをチェックできます。

尿検査で尿を採るときの注意点とは

尿検査は体の状態を調べる臨床検査の中でも検体の採取が簡単で、検査を受けるときの負担が少ない検査です。健康診断の尿検査では、起きてすぐの朝一番の尿(早朝尿)を提出するように指示されることがほとんどですが、早朝尿は成分が凝縮されており、感度よく検査を行えることがその理由です。
また、起立姿勢を続けたり運動をしたりすると尿中にタンパク質が現れることがあるので、こうした生理現象と病的な異常とを区別するためにも、寝ている間に作られた尿で検査を行います。

採尿時は、雑菌などの混入をなるべく防ぐために、出始めではなく途中の尿(中間尿)を採取します。量が少ないと検査が正確に行えない場合があるため、規定量を守って採尿することが大切です。尿の量が足りないからといって、水で薄めたりしないようにしましょう。少ない量しか採尿できず不安がある場合は、尿を提出する際に医療機関に相談してみてください。

女性の場合、月経中はもちろん、月経の前後数日間は経血が混入する可能性があるため、可能であればその時期を避けるようにしましょう。また、採尿前はビタミンCを大量に摂取することは控える必要があります。ビタミンCには抗酸化作用があり、酸化反応によって陰性・陽性を判定する尿糖などの検査項目に影響を与える可能性があるためです。激しい運動をすると尿中にタンパク質がもれ出る可能性が高まるため、採尿の前日に激しい運動をするのも控えた方がよいでしょう。

尿検査の結果の見方と検査で分かる病気

尿検査の結果の見方と検査で分かる病気

健康診断の尿検査では、主に「尿蛋白」「尿糖」「尿潜血」「尿沈渣(にょうちんさ)」について調べます。それぞれ、基準値の範囲内であれば陰性(-)、基準値を超える量が検出されれば陽性(+)と判定されます。

尿検査で調べる項目(※1)

  • 尿蛋白

尿中のタンパク質の量を調べる検査。正常であればタンパク質は腎臓ですべて再吸収されますが、腎機能が低下するとタンパク質が尿中にもれ出てきます。

  • 尿糖

尿中のブドウ糖の量を調べる検査。血糖値が高いと再吸収しきれなくなり、尿中に糖がもれ出てきます。

  • 尿潜血

尿中に血液(赤血球)が混じっていないかを調べる検査。陽性の場合、尿の通り道のどこかに出血の原因がある可能性があります。

  • 尿沈渣(にょうちんさ)

尿を遠心分離器にかけて、尿の沈殿物に赤血球や白血球、粘膜由来の細胞、細菌、円柱などの成分が増加していないかを調べる検査。腎臓や尿路などの泌尿器系の臓器の異常を見つけることができます。

各項目の基準値と陽性(+)の場合に疑われる病気(※1、2)

項目 A:異常なし B:軽度異常 C12:要再検査
(12カ月後)
C3:要再検査
(3カ月後)
D:要精密検査 陽性の場合に疑われる病気
尿蛋白 (-) (±) (+)*1 (2+以上) 急性および慢性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、糖尿病性腎症、腎硬化症など
尿糖*3 (-) (±) (+)以上 糖尿病、甲状腺機能亢進症など
尿潜血 (-) (±) (+)*1 (2+以上) 尿路腫瘍、尿路結石、膀胱炎、糸球体腎炎など
尿ウロビリノーゲン (±) (+) (-)
(2+)以上
尿沈渣*2 赤血球:5未満/HPF
白血球:5未満/HPF
尿細管上皮細胞:1未満/HPF
赤血球:5-9/HPF
白血球:5-9/HPF
赤血球:10-/HPF
白血球:10-/HPF+
尿細管上皮細胞:1-/HPF
尿路感染症、尿路腫瘍、尿路結石、糖尿病性腎症、ネフローゼ症候群など

*1:尿蛋白が(+)かつ尿潜血が(+)である場合、尿検査判定をD判定とする。
*2:尿沈渣の検査項目は20項目以上ある。ここでは一部を抜粋。
*3:血糖検査の結果と総合的に判定し、糖代謝判定とする。

#受診コースによっては、検査項目に含まれない検査もございます。
#上記の各項目の基準値は「日本人間ドック・予防医療学会, 2024年度判定区分表(※2)」を引用の上、当クリニックの判定基準を記載しています。ご加入の健康保険組合や他施設で受診された場合は、判定基準が異なる場合がございます。また、陽性の場合に疑われる病気については、一部当クリニックで追加をしています。

新たな国民病「慢性腎臓病」とは?

慢性糸球体腎炎や腎硬化症などの腎臓の病気や糖尿病、高血圧などの全身の病気の影響で慢性的に腎機能が低下していく状態を「慢性腎臓病(CKD)」といいます。近年、慢性腎臓病の患者数は増加しており、患者数は約1,480万人と推計されています(※3)。成人の7~8人に1人が慢性腎臓病を患っており、重症の場合は人工透析が必要となり、生活が制限されます。「慢性腎臓病」は、がんや生活習慣病と並んで新たな国民病ともいわれています。

慢性腎臓病を早期発見するには、定期的に尿検査を受けることが最も大切です。腎臓は一度機能が失われてしまうと回復することがほとんどないため、いかに早く発見し、治療を受けて悪くなるスピードを遅くするかが重要となります。


尿検査は定期的に受けることが大切!

毎年の健診で何気なく受けている尿検査は、慢性腎臓病や糖尿病などの病気の早期発見につながる大切な検査です。検査結果は意識して確認するようにしましょう。健康診断や人間ドックで繰り返し尿蛋白が陽性になっている場合や、「要精密検査」と判定された場合は、自己判断せずにできるだけ早めに泌尿器科を受診しましょう。

また、尿検査とあわせて、腎臓をCTや超音波検査で詳しく調べることもおすすめします。当クリニックでは、外来二次検査での精密検査としてはもちろん、人間ドックや健康診断に追加できるオプションとしてもお受けいただけます。

 

参考文献

  • (※1)日本人間ドック・予防医療学会, 尿検査
  • (※2)日本人間ドック・予防医療学会, 2024年度判定区分表
  • (※3)日本腎臓学会, エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023

人間ドックコース・料金

当クリニックでは皆さまのご要望に柔軟に対応できるよう、多様なコースをご用意しています。
どのコースを受けたら良いかわからない場合は、お気軽にご相談ください。

森山 紀之

医療法人社団進興会 理事長

1973年千葉大学医学部卒。
元国立がん研究センター がん予防・検診研究センター センター長、東京ミッドタウンクリニック常務理事 兼 健診センター長を経て、現職。

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