知っておきたい慢性腎臓病(CKD)-原因、症状から予防法まで
糖尿病や脳卒中、心臓病などとも深く関わり、健康寿命を損なう要因となる「慢性腎臓病(CKD)」。日本での患者数は1,480万人と推計されており、成人の7~8人に1人が慢性腎臓病だと考えられています(※1)。
今回は、慢性腎臓病とはどんな病気なのか、早期発見のためにはどんな検査を受ければいいのかなどについて詳しく解説します。
目次
そもそも、腎臓の役割とは?
腎臓は、腰の上あたりに左右1つずつあるそら豆のような形をした臓器で、握りこぶしほどの大きさがあります。腎臓には1分間に1.2Lもの血液が流れ込んでおり、血液をろ過して老廃物や有害物質を尿として排出しています。また、腎臓は塩分や水分の排出量を調整して血圧や体液量をコントロールする働きもしています。
私たちの体が健康に保たれているのは、腎臓が休みなく働き続けているおかげです。もし腎臓の機能が低下し、十分な働きができなくなってしまったら、人工的に血液をろ過してきれいにする治療(透析)を行ったり、健康な腎臓を移植したりしなければ、私たちは生きていくことができません。腎臓はそれほど重要な臓器なのです。
慢性腎臓病(CKD)とは、どんな病気?
腎機能が低下し、透析が必要になる人を1人でも少なくすることを目指して新しく提唱されたのが、「慢性腎臓病(CKD)」という概念です。CKDとは、「Chronic Kidney Disease」の略称です。
慢性腎臓病とは、原因を問わず腎臓の機能がゆっくりと(一般的には数年単位で)低下する状態を指します。
慢性腎臓病は、以前腎臓病の病名として使われていた「慢性腎不全」よりも軽度の腎機能障害を含んだ概念となっていますが、これは自覚症状が全くないような早期の段階で発見することが重要視されているためです。「慢性腎臓病」は、いわば「慢性腎不全」の予備軍と考えられ、慢性腎臓病が進行して腎不全にならないようにすることが大切です。
なぜなら、慢性の腎臓病が進行して腎臓がほとんど機能しなくなり、腎臓の代わりとなる治療(透析や腎臓移植)が必要になる重症の腎不全になることや、重症の腎不全に進行しなかったとしても慢性腎臓病があると脳卒中や心筋梗塞などの発症リスクが高まることが分かっており、より早い段階で発見し、腎機能を守るための対策を講じることが大切だからです。
慢性腎臓病ではどんな症状が現れる?
慢性腎臓病は、初期の段階では自覚症状がほとんどありません。そのため、知らず知らずのうちに進行していることも少なくないのが慢性腎臓病の怖いところです。腎臓の機能は一度失われると回復することがほとんどないので、早期の段階で発見して適切な治療を開始し、悪くなるスピードをいかに遅くするかが重要になってきます。
病気がかなり進行すると、むくみや夜間尿、貧血、倦怠感、かゆみなどの症状が現れるようになります。
慢性腎臓病が進行した場合に現れる症状(※2)
- むくみ:腎臓が体内の水分量をうまく調整できなくなるため、体内に余分な水分がたまってしまう
- 夜間尿:尿の濃縮力が低下することで尿の量が増え、夜間に何度もトイレに行くようになる
- 貧血:腎臓は赤血球の産生を促すエリスロポエチンというホルモンを分泌しており、腎機能が低下するとこのホルモンの分泌が減るため、赤血球を作る能力が低下して貧血になる
- 倦怠感:重症の腎不全になると、尿毒症物質が体内に蓄積したり、貧血が進行したりしてだるさを感じるようになる
- かゆみ:腎機能がかなり低下して血液や皮膚に老廃物がたまると、かゆみを感じるようになる
慢性腎臓病が進行するスピードは個人差が大きく、進行が緩やかで生涯にわたって自分の腎臓で過ごせる患者さんがいる一方、進行が早いために重症の腎不全となり、透析などの治療が必要になる患者さんもいます。
慢性腎臓病(CKD)の原因となる病気と予防策
腎臓は血管が張り巡らされている臓器であり、血管にダメージを与えるような病気は慢性腎臓病(CKD)を引き起こす原因となります。代表的なのが、糖尿病や高血圧、肥満などの生活習慣病です。そのほかに、IgA腎症などの腎臓の病気や多発性嚢胞腎などの遺伝性の病気も慢性腎臓病の原因となります。
透析に至った原因を調べた調査によると、糖尿病による慢性腎臓病(糖尿病性腎症)が39.5%と最も多く、次いで慢性糸球体腎炎が24.0%、腎硬化症が13.4%となっています(※3)。糖尿病性腎症の割合が高いものの、近年は腎硬化症の割合が増えています。腎硬化症は長期間続く高血圧や動脈硬化などによって引き起こされる病気です。慢性腎臓病になると、元々あった高血圧が重症化し、さらに腎臓に負担がかかるという悪循環に陥ります。
生活習慣病の持病がある場合は、その治療をしっかり行うことが慢性腎臓病を予防する第一歩です。健康診断でメタボリックシンドロームと指摘されたことがある人も、慢性腎臓病予備軍の可能性が高いため、暴飲暴食や運動不足、喫煙などの不健康な生活習慣を改めることが大切です。
健康診断を受けて、慢性腎臓病(CKD)の早期発見につなげよう!
慢性腎臓病(CKD)を早期発見するには、定期的な健康診断で尿検査を受けることが最も大切です。また、血液検査で血清クレアチニン値を測定している場合、その値を使って腎機能の指標となるeGFRを計算することもできます。
尿蛋白が陽性になっている場合や、「要精密検査」と判定された場合は、自己判断せずにできるだけ早めに泌尿器科を受診しましょう。
前述の記載以外にも慢性腎臓病になることもあるため、リスクの有無を詳しく知りたいという方は、尿検査や血液検査とあわせて、CT検査や超音波検査で腎臓を調べておくといいでしょう。
当クリニックでは、健康診断後の精密検査としてはもちろん、人間ドックや健康診断に追加できるオプションとしてCT検査や超音波検査をご用意しています。
参考文献
- (※1)日本腎臓学会, エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023
- (※2)日本腎臓学会, 腎臓の病気について調べる 3.腎臓がわるくなったときの症状
- (※3)日本透析医学会, わが国の慢性透析療法の現況(2022年12月31日現在)
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当クリニックでは皆さまのご要望に柔軟に対応できるよう、多様なコースをご用意しています。
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記事監修
森山 紀之
医療法人社団進興会 理事長
1973年千葉大学医学部卒。
元国立がん研究センター がん予防・検診研究センター センター長、東京ミッドタウンクリニック常務理事 兼 健診センター長を経て、現職。