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肝臓がんの原因と予防・早期発見に役立つ検査

公開日:2022.07.08

日本人のがんの中でも、死亡数でトップ5に入る肝臓がん[※1]。肝炎ウイルスの感染が主な原因ですが、最近は、生活習慣の乱れから脂肪肝やアルコール性肝炎になり、肝臓がんに進行するケースも増えています。肝臓がんの予防・早期発見のためには、肝炎ウイルスの有無を調べる検査や肝機能検査を受けて、肝臓がんのリスクが高いかどうかを知っておくことが重要です。今回は、肝臓がんの原因や症状、予防・早期発見のための検査について解説します。

肝炎ウイルスの感染や脂肪肝が肝臓がんのリスク要因

肝臓はからだの中で最も大きい臓器で、成人で1kgほどの重さがあります。肝臓がん(肝がん)は、肝臓を構成している細胞ががん化したもので、肝細胞がんともいいます。肝臓の中には胆管という、肝臓で作られる消化液が流れる細い管が張り巡らされており、この胆管ががん化したものは肝内胆管がん(胆管細胞がん)と呼ばれ、肝臓がんとは区別されています。
一般的に肝臓がん(肝がん)というときは、この肝内胆管がんを除いた肝細胞がんを指します。

肝臓にできるがんには、「原発性肝臓がん」と、「転移性肝臓がん」の2つがあります。原発性肝臓がんはがんが肝臓から発生したものです。一方、転移性肝臓がんは、肝臓以外の臓器にできたがんが肝臓に転移したものです。がんは肝臓にあっても、最初に発生した臓器のがんと同じ性質を持つため、治療は最初に発生したがんに準じて行います。

1年間で肝臓がんと新たに診断される患者さんの数は、男性が約2万6千人、女性が約1万2千人で、男性に多い傾向があります。男女とも50歳代から増加しはじめ、年齢の上昇とともに肝臓がんにかかる人の割合は高くなります[※2]
がんが進行すると治癒の見込みは大きく下がるため、予防とともに早期発見が重要です。

肝臓がんの5年相対生存率*

  1. 1. Ⅰ期:64.0%
  2. 2. Ⅱ期:40.8%
  3. 3. Ⅲ期:15.2%
  4. 4. Ⅳ期: 3.7%

*出典:全国がんセンター協議会 部位別臨床病期別5年相対生存率(2011-2013年診断症例)

肝臓がんは、肝機能に影響を与える慢性的な病気(肝炎、肝硬変など)がある人で発症しやすく、正常な肝臓では発症しにくいことが大きな特徴です。日本人のかかる肝臓がんの多くが、肝炎や肝硬変を引き起こす肝炎ウイルスへの感染が原因とされています。肝炎ウイルスの感染に対しては有効な治療法があるため、適切な治療を受けることで肝臓がんへの進行を防ぐことができるようになってきています。

一方、最近は肝炎ウイルス感染を伴わない肝臓がんが増加傾向にあります。その主な要因とされているのが、脂肪肝です。過度の飲酒や高カロリーの食事、運動不足などの生活習慣の乱れは、脂肪肝の原因となります。脂肪肝から肝炎を発症し、肝硬変に進行して、肝臓がんを合併することも少なくありません。

〈肝臓がんのリスクを高める要因〉

  • C型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルスの感染
  • 肝炎、肝硬変
  • 大量の飲酒
  • 脂肪肝
  • 喫煙
  • 肥満、糖尿病

 

肝臓がんでは、どんな症状が現れる?

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれており、炎症やがんがあっても初期の段階では自覚症状はほとんど現れません。

一般的に、慢性的な肝炎は長い期間を経て肝硬変に進行し、さらに肝臓がんを合併するといわれています。慢性肝炎の段階では、からだがだるい、疲れやすい、食欲がわかないなどの症状が現れることがありますが、これらはほかの病気でもみられる症状のため、症状からだけでは慢性肝炎かどうかは判別できません。

慢性肝炎が肝硬変まで進行すると、手のひらに赤い斑点ができる、からだが黄色くなる(黄疸:おうだん)、むくみが出る、おなかに水がたまって膨れるなどの症状が現れます。肝臓がんの患者さんで肝硬変を合併している場合には、こうした肝硬変の症状がみられることがあります。

初期の肝臓がんではがん自体による症状はほとんどなく、検診やほかの病気の検査でたまたま発見されることも少なくありません。肝臓がんが進行すると、おなかのしこりや圧迫感、腹痛、発熱などの症状が現れることがあります。

 

肝臓がんの予防・早期発見に役立つ検査

肝臓がんは肝炎ウイルスの感染が大きな原因であることが分かっているので、予防のためには肝炎ウイルスに感染しているかどうかを早期に知ることが重要です。地域の保健所や各自治体が委託する医療機関では肝炎ウイルス検査(HCV抗体、HBs抗原)を無料で受けられるので、まだ受けたことがない方は一度検査を受けることが推奨されます。なお、肝炎ウイルス検査は当クリニックでも実施しています。

また、健康診断などで定期的に肝機能をチェックし、脂肪肝や肝炎などにかかっている可能性がないかを調べることも大切です。乱れた生活習慣が脂肪肝や肝炎の原因となっている場合は、生活習慣を改善することが肝臓がんの予防につながります。肝機能の検査については「お酒の飲み過ぎだけじゃない!?肝機能検査のAST、ALT、γ-GTPで分かること」で詳しく解説しているので、そちらも合わせてご覧ください。

肝臓がんは発症しても自覚症状が現れにくいため、大量の飲酒や肥満、糖尿病など、肝臓がんのリスクを高める背景因子がある人は、画像検査などで肝臓の状態を詳しく調べておくとよいでしょう。

当クリニックでは、肝臓がんの可能性を調べる検査として、上腹部マルチスライスCT検査や腹部超音波(エコー)検査、腫瘍マーカー検査(PIVKA-Ⅱ、AFP)をご用意しています。いずれも、各種健康診断、人間ドックのオプションとして検査を受けていただくことが可能です。これらの検査が組み込まれている人間ドックコースもご用意していますので、詳しく知りたい方はお気軽にお問い合わせください。

 

【関連コラム】がんの可能性を見つける検査(腫瘍マーカー検査)について

お酒の飲み過ぎだけじゃない!?肝機能検査のAST、ALT、γ-GTPで分かること

 

参考文献

  • (※1)国立がん研究センターがん情報サービス 最新がん統計
  • (※2)国立がん研究センターがん情報サービス がん種別統計情報 肝臓

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当クリニックでは皆さまのご要望に柔軟に対応できるよう、多様なコースをご用意しています。
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森山 紀之

医療法人社団進興会 理事長

1973年千葉大学医学部卒。
元国立がん研究センター がん予防・検診研究センター センター長、東京ミッドタウンクリニック常務理事 兼 健診センター長を経て、現職。

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