脂質検査の結果の見方-コレステロール、中性脂肪の値を改善するには?
健康診断で行う検査の1つである脂質検査。コレステロールや中性脂肪の値を調べることで、動脈硬化のリスクや他の疾患の可能性を知ることができます。今回は、脂質検査で測定する項目の基準値や、数値を改善するための生活習慣のポイントなどについて解説します。
目次
脂質検査とは、どんな検査?
脂質検査は、血液を採取して血液中の脂質の濃度を調べる検査です。脂質検査で調べる脂質には、コレステロールと中性脂肪があります。
コレステロールは、からだを構成する細胞の膜の構成成分やホルモンの原料になるなど、体内で重要な役割を担っている脂質です。一方、中性脂肪は生きるために必要なエネルギー源となる脂質で、皮下組織や内臓の周りの脂肪組織に蓄えられています。
脂質はそのままでは血液に溶けないため、水となじみのよいリポ蛋白と呼ばれるタンパク質に包まれた状態で血中に存在します。リポ蛋白には、LDL(低比重リポ蛋白)やHDL(高比重リポ蛋白)などの種類があり、血液検査ではリポ蛋白に含まれる脂質の量を測定しています。
コレステロールの場合は、LDLに含まれるコレステロールを「LDLコレステロール」、HDLに含まれるコレステロールを「HDLコレステロール」として測定します。一方、中性脂肪の場合は、数種類のリポ蛋白に含まれる中性脂肪をひと括りで測定します。
脂質検査の検査項目と基準値
勤務先などで行われる健康診断では、脂質検査が必須の検査に含まれています。健康診断ではLDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪の3項目を測定することが一般的ですが、加入している保険組合によっては総コレステロールやNon-HDLコレステロールの測定を行う場合もあります。当クリニックの人間ドックで実施する脂質検査では、これら5項目すべての測定を行っています。
・LDLコレステロール
LDLコレステロールは、一般的に悪玉コレステロールと呼ばれています。LDLは肝臓にある脂質を全身に運ぶ役割をするリポ蛋白です。LDLに存在するコレステロールが過剰だと血管の壁に蓄積して動脈硬化を引き起こす原因になるため、「LDLコレステロールが高い=悪い」とされています。これを分かりやすくするために、LDLコレステロールは“悪玉”と呼ばれています。
LDLコレステロールの基準値[※]
要注意 | 基準範囲 | 要注意 | 異常 |
---|---|---|---|
59mg/dL以下 | 60~119mg/dL | 120~179mg/dL | 180mg/dL以上 |
・HDLコレステロール
HDLコレステロールは、一般的に善玉コレステロールと呼ばれています。HDLは血液中の余分なコレステロールを回収して肝臓へと運ぶ役割をするリポ蛋白です。HDLに存在するコレステロールが多いということはコレステロールの処理が良好であり、動脈硬化のリスクが低い(=良い)ことを意味します。これを分かりやすくするために、HDLコレステロールは“善玉”と呼ばれています。
LDLコレステロールの基準値[※]
異常 | 要注意 | 基準範囲* |
---|---|---|
29mg/dL以下 | 30~39mg/dL | 40~119mg/dL |
*将来、脳・心血管疾患を発症しうる可能性を考慮した基準範囲
・Non-HDLコレステロール
Non-HDLコレステロールは、総コレステロールからHDLコレステロールを差し引いた値です。動脈硬化を引き起こすコレステロールはLDLコレステロール以外にもわずかに存在しており、Non-HDLコレステロールは動脈硬化の原因となるすべての悪玉コレステロールの量を指します。動脈硬化のリスクを総合的に管理できる指標として、脂質異常症の診断基準の1つとなっています。
Non-HDLコレステロールの基準値[※]
異常 | 基準範囲* | 要注意 | 異常 |
---|---|---|---|
89mg/dL以下 | 90~149mg/dL | 150~209mg/dL | 210mg/dL以上 |
*将来、脳・心血管疾患を発症しうる可能性を考慮した基準範囲
・中性脂肪
血液中の中性脂肪は、食べ過ぎやお酒の飲みすぎなどによって高くなります。おなかに脂肪がつくメタボリックシンドロームでは、中性脂肪の値が150mg/dL以上であることが診断基準の1つとなっています。中性脂肪が極端に高い場合、急性膵炎を発症するおそれがあるので注意が必要です。
中性脂肪の基準値[※]
要注意 | 基準範囲 | 要注意 | 異常 |
---|---|---|---|
29mg/dL以下 | 30~149mg/dL | 150~499mg/dL | 500mg/dL以上 |
コレステロールや中性脂肪の値を改善するには?
コレステロールや中性脂肪の値に異常が生じた状態を「脂質異常症」といいます。脂質異常症には、生まれつきの遺伝性の病気によるものと、甲状腺機能低下症などの基礎疾患や薬剤の使用、不摂生な生活などによって生じるものがあります。後者の場合、多くは原因を治療したり、取り除いたりすることで改善します。
健康診断の結果、脂質の値が基準値から大きく外れていたら、まず医療機関を受診して相談するようにしましょう。生活習慣が要因と考えられる場合、食事や運動習慣を見直すことが大切です。どの値に異常があるのかをしっかり把握し、自分に合った改善策に取り組みましょう。
〈LDLコレステロールが高い場合の改善策〉
- ・飽和脂肪酸を多く含む肉の脂身やバター、生クリームなどの摂取を控える
- ・トランス脂肪酸を含む菓子類やマーガリンなどの摂取を控える
- ・卵やレバーなどコレステロールを多く含む食品の摂り過ぎに注意する
- ・食物繊維を多く含む全粒穀物や海藻、きのこ、野菜、大豆製品を多く摂る
〈HDLコレステロールが低い場合の改善策〉
- ・有酸素運動をメインに、定期的な運動を行う
- ・炭水化物の摂りすぎに注意し、トランス脂肪酸の摂取を控える
- ・禁煙する
- ・アルコールの摂取を控える
〈中性脂肪が高い場合の改善策〉
- ・炭水化物の摂りすぎに注意し、糖質を多く含む食品の摂取を減らす
- ・アルコールの摂取を控える
- ・n-3系多価不飽和脂肪酸(EPAやDHAなど)を多く含む魚類の摂取を増やす
私たちの健康や活動維持に不可欠な脂質ですが、運動不足や食生活次第で不適切な状態になりやすい項目でもあります。健康診断や人間ドックで定期的な確認を行うことが重要です。
次回コラムでは、コレステロールや中性脂肪値が基準値を外れた状態だとどんな病気につながる可能性があるのか、予防法なども含めてご紹介します。
【関連コラム】
この他にも、血液検査の検査項目について解説したコラムをご用意しております。
参考文献
- ※日本人間ドック学会, 人間ドックの検査項目 血液検査
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記事監修
森山 紀之
医療法人社団進興会 理事長
1973年千葉大学医学部卒。
元国立がん研究センター がん予防・検診研究センター センター長、東京ミッドタウンクリニック常務理事 兼 健診センター長を経て、現職。