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動脈硬化の最大の原因といわれる脂質異常症とは

公開日:2022.11.11

糖尿病や高血圧と並んで代表的な生活習慣病である脂質異常症。心筋梗塞や脳梗塞などの原因となる動脈硬化を進行させる危険因子として特に重要とされており、脂質異常症の有無を調べる脂質検査は健康診断の必須項目となっています。今回は、脂質異常症の診断基準や原因、予防法などについて詳しく解説します。

脂質異常症とは、どんな病気?

血液中に存在するコレステロールや中性脂肪(トリグリセライド)などの脂肪分のことを血清脂質といいます。「脂質異常症」は、これらの血清脂質の濃度が基準値から外れた状態を指します。

脂質異常症には、LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)の値が高くなる「高LDLコレステロール血症」、HDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)の値が低くなる「低HDLコレステロール血症」、中性脂肪の値が高くなる「高トリグリセライド血症」などがあります。なお、それぞれの脂質の働きについては「脂質検査の結果の見方-コレステロール、中性脂肪の値を改善するには?」のコラムで詳しく解説しています。

脂質異常症は、以前は「高脂血症」と呼ばれていましたが、低HDLコレステロール血症のように値が低くなる脂質異常もあるため、誤解を招かないように診断名が変更されました。

脂質異常症は自覚症状がほとんどないため、早期の発見・診断のためには血液検査による脂質検査が重要です。診断は、下記の診断基準に基づいて行われます。

 

脂質異常症診断基準[※1]

LDLコレステロール 140mg/dL以上 高LDLコレステロール血症
120~139mg/dL 境界域高LDLコレステロール血症
HDLコレステロール 40mg/dL未満 低HDLコレステロール血症
中性脂肪(トリグリセライド) 150mg/dL以上(空腹時採血※2) 高トリグリセライド血症
175mg/dL以上(随時採血※2)
Non-HDLコレステロール 170mg/dL以上 高non-HDLコレステロール血症
150~169mg/dL 境界域高non-HDLコレステロール血症

※1.日本動脈硬化学会:動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版より

※2.基本的に10時間以上の絶食を「空腹時」とする(水やお茶などのカロリーのない水分の摂取は可)。空腹時であることが確認できない場合を「随時」とする。

 

脂質異常症の原因と予防法

脂質異常症は、生まれつきの遺伝子の病的な変化を背景に発症するものと、甲状腺機能低下症などの基礎疾患や薬剤の使用、不摂生な生活などによって発症するものに分けられます。後者の場合は、原因となっている病気を治療したり、生活習慣を見直したりすることで予防・改善することが可能です。

■脂質異常症の原因となる生活習慣

  • 〈LDL(悪玉)コレステロールが高くなる原因〉
  • ・カロリーの摂り過ぎ
  • ・コレステロールや飽和脂肪酸の摂り過ぎ

 

  • 〈HDL(善玉)コレステロールが低くなる原因〉
  • ・運動不足
  • ・喫煙
  • ・肥満

 

  • 〈中性脂肪が高くなる原因〉
  • ・カロリー(特にアルコールや糖質・炭水化物)の摂り過ぎ
  • ・運動不足

脂質異常症の発症には食事が大きく関係するため、予防のためにはまず食生活を改善することが大切です。高トリグリセライド血症や低HDLコレステロール血症では糖尿病や肥満、高血圧などの他の生活習慣病を合併することが多いとされていますが、食生活の改善はこれらの病気の予防にも有用です。

 

■脂質異常症を予防・改善するための食事のコツ

  • ・動物脂(ラード、バターなど)や、脂身の多い肉の摂取を減らす
  • ・乳・乳製品は脂肪の少ないものを選ぶ
  • ・卵やレバーなどコレステロールを多く含む食品の摂り過ぎに注意する
  • ・トランス脂肪酸を含む菓子類やマーガリンなどの摂取を控える
  • ・n-3系多価不飽和脂肪酸(EPAやDHAなど)を多く含む魚類の摂取を増やす
  • ・野菜や海藻、きのこ、こんにゃく、大豆・大豆製品を多く摂る
  • ・穀類は玄米や麦飯、全粒粉パンなどの食物繊維の多いものを選ぶ
  • ・菓子類や果糖を多く含む清涼飲料は控える
  • ・アルコールは1日25g(ビール350mL/日本酒1合)以下にする

 

脂質異常症と動脈硬化の関係とは

脂質異常症の有無を調べる脂質検査は、健康診断の必須項目となっています。なぜなら、脂質異常症を放置してしまうと、心筋梗塞や脳梗塞など動脈硬化性の病気を発症するおそれがあるからです。

動脈は心臓から送り出される血液を全身に運び、栄養や酸素を行きわたらせる役割を持つ血管です。勢いよく押し出される血液の圧力に耐えるため、動脈には柔軟性が備わっています。動脈硬化は、この血管の柔軟性が失われ、固くなってしまう状態のことです。脂質も動脈を通って全身の組織に運ばれますが、脂質異常症などの代謝異常があると動脈の内膜にLDL(悪玉)コレステロールなどの脂質が蓄積し、プラークと呼ばれるコブのようなものができます。このようにプラークができることで起こる動脈硬化を粥状動脈硬化(アテローム動脈硬化)といいます。

 

心臓に血液を送る冠動脈にプラークができ、それが大きくなって血管が狭くなったり、破裂して血栓が詰まったりすると、狭心症や心筋梗塞を引き起こします。また、脳内の太い動脈や頸動脈にプラークができると脳梗塞の原因になります。

このように、脂質異常症は長い時間をかけて動脈硬化を進行させ、やがて命を脅かす病気を引き起こす可能性があるのです。早期に適切な対策を取れば動脈硬化を予防・改善することができるので、定期的に脂質検査を受けて脂質異常症の有無を確認するようにしましょう。

 

【関連コラム】

脂質異常症の有無を調べる「脂質検査」について

脂質検査の結果の見方-コレステロール、中性脂肪の値を改善するには?

 

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森山 紀之

医療法人社団進興会 理事長

1973年千葉大学医学部卒。
元国立がん研究センター がん予防・検診研究センター センター長、東京ミッドタウンクリニック常務理事 兼 健診センター長を経て、現職。

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