心臓超音波(心エコー)検査を受けると、どんなことがわかる?
日本人の死因で、がんに次いで多い心疾患。特に、平均年齢の上昇にともない心不全を発症する人が急増しています。心臓の状態を調べる検査にはさまざまなものがありますが、もっとも簡便に行える検査の1つが心臓超音波(心エコー)検査です。今回は、心臓超音波(心エコー)検査の特性や検査でわかる病気について詳しく解説します。
心臓超音波(心エコー)検査とは
心臓超音波(心エコー)検査とは、超音波を用いて心臓の状態を調べる検査のことです。超音波(エコー)検査は、耳では聞くことのできない高い周波数の音波(超音波)を使って、からだの中の臓器を写し出します。放射線を使うX線やCT検査のように被ばくのリスクがなく、簡便に行えるというメリットがあるため、病気の診断はもちろん、治療後の経過観察や妊婦健診などで幅広く活用されています。心臓に人工弁やペースメーカーを植え込んでいる場合でも、制限なく検査が可能です。
心臓超音波(心エコー)検査では、心臓の大きさや形、壁の厚さ、動く様子がリアルタイムで観察することができます。心臓の形状や血液を送り出す力を調べることで、機能に異常がないかを確認し、心臓内を流れる血流に色を付けて表示をすることで、血流の異常や心臓弁(血液の逆流を防ぐ役割をする)の異常を見つけることができます。
心臓超音波(心エコー)検査方法
超音波検査は、超音波を発生させる器械(プローブ)をからだの表面に当てるだけで検査ができます。心臓超音波(心エコー)検査の方法は、ブラジャーなどの下着は全て外した状態で胸部にジェルを塗り、プローブを当てて検査を行います。ジェルはからだの表面とプローブの間に空気が入らないようにして、検査の精度を高める目的で使用するもので、肌への害はありません。冷たいジェルがヒヤッとして苦手だという方のために、当クリニックでは温めたジェルを使用し、検査後も温かいタオルでふき取りを行っています。
心臓超音波(心エコー)検査でわかる病気
何らかの原因によって心臓の働きに異常が起こり、血液の循環がうまくいかなくなる病気を総称して心疾患と呼びます。心疾患は日本人の死因の第2位となっており、心疾患で亡くなる人の数は年間で約23万人にも上ります(※1)。
【心臓のしくみ】青は体から戻って来る静脈血、赤は全身に送り出す動脈血の流れ
心疾患の代表的な病気に、心不全、虚血性心疾患(心筋梗塞や狭心症など)、不整脈、弁膜症、心筋症などがありますが、これらの病気を発見・診断する上で、心臓超音波(心エコー)検査はとても有用な検査です。
特に近年、動脈硬化が原因の虚血性心疾患や高齢化にともなう高血圧の増加などを背景に、心不全の患者さんが急増しています。心不全の患者数は2030年には130万人に達すると推計されており(※2)、患者数の爆発的な増加は、感染症の広がりになぞらえて「心不全パンデミック」とも呼ばれています。
心不全は、何らかの心臓の機能障害や構造的な異常によって、全身にしっかり血液を送り出せなくなった状態です。心筋梗塞や不整脈、心筋症などさまざまな心疾患が原因で、最終的に心不全が起こり、呼吸困難や倦怠感、浮腫(むくみ)などの症状が現れます。高齢になるほど発症しやすくなるため、心不全は高齢者がもっとも気を付けなくてはならない心臓の病気のひとつといえます。動悸や息切れが増えたと感じたら、年のせいだと放置せず、早めに医療機関を受診することが大切です。
心電図検査と心臓超音波(心エコー)検査の違い
職場の健康診断などで実施される、もっとも基本的な心臓の検査は心電図検査です。心電図検査は、縮んだり拡がったりを繰り返す心臓の動きを、波の形として記録する検査で、虚血性心疾患や不整脈といった心疾患の発見に役立ちます。
心電図検査や胸部レントゲン(X線)検査などで異常が見つかった場合、精密検査として心臓超音波(心エコー)検査を行うことが一般的です。心電図検査は心臓の病気の兆候を捉えることができますが、心臓そのものを観察する検査ではないので、心臓超音波(心エコー)検査によって心臓の大きさや壁の厚さ、動き方を確認することが重要です。
生活習慣病や高齢化による心臓の病気を早期発見するために、心臓超音波(心エコー)検査は人間ドックの一環として行われることもあります。当クリニックでも、各種人間ドックのオプションとして受けることが可能です。
また、一般的な心電図検査で心疾患が疑われた場合、運動をしながら心電図をとる運動負荷心電図や、24時間にわたって心電図を記録するホルター心電図などを行い、より詳しく心臓の状態を調べることもあります。当クリニックでは、胸部に貼り付けることができる軽量・小型のホルター心電図「Heartnote🄬」を採用しております。付けたままシャワーを浴びることも可能なため、日常生活にほとんど影響なく検査を行えます。
こうした検査で万が一異常や大きな病気が見つかった場合は、連携する大学病院の循環器専門医へご紹介も行っています。息切れやむくみなどの不安な症状がある方、心臓の状態を一度しっかり調べておきたいという方は、ぜひ当クリニックへご相談ください。
参考文献
- (※1)厚生労働省, 令和4年(2022)人口動態統計(確定数)の概況
- (※2)Okura Y, et al.: Circ J 2008; 72: 489-491.
人間ドックコース・料金
当クリニックでは皆さまのご要望に柔軟に対応できるよう、多様なコースをご用意しています。
どのコースを受けたら良いかわからない場合は、お気軽にご相談ください。
記事監修
森山 紀之
医療法人社団進興会 理事長
1973年千葉大学医学部卒。
元国立がん研究センター がん予防・検診研究センター センター長、東京ミッドタウンクリニック常務理事 兼 健診センター長を経て、現職。