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健康診断の問診票で聞かれる家族歴。家族歴を知ることはなぜ重要?

公開日:2024.05.28

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健康診断や病院などの医療機関を初めて受診する際に必ず記入する問診票。その項目の中に、血縁者がかかったことのある病気(家族歴)についての質問項目があります。自分が受診した医療機関で自分以外の家族の病気について聞かれるのはなぜか、疑問に思ったことはないでしょうか?今回は家族歴からどんなことがわかるのか、その重要性について詳しく解説します。

問診票で聞かれる「既往歴」と「家族歴」って何?

診察の前に書く問診票には、必ず病歴についての質問項目に「既往歴」と「家族歴」があります。

「既往歴」
既往歴とは、患者さん自身が現在治療中の病気やこれまでにかかったことのある病気、受けたことのある手術などの項目(情報)のことです。既往歴には、大きな病気のことだけでなく、薬による副作用やアレルギー、交通事故によるケガ、出産経験、日々の健康状態なども含まれます。こうした情報は、今かかっている病気の診断に役立ち、医師が適切な治療法を選択するための重要な手がかりになります。

「家族歴」
家族歴とは、本人の既往歴だけでなく、家族など血縁者の既往歴(健康や病気について質問する項目)のことです。血の繋がった家族や親族がどのような病気にかかったかという情報は、自分のかかりやすい病気や将来のリスクを知る上でとても役立つ情報のひとつになります。

家族歴を把握することは、なぜ重要?

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がんや生活習慣病など病気は、ライフスタイルや生活環境などの後天的な要因と、親から受け継ぐ遺伝的な要因が、複合的にからみあって発症することが知られています(※1)。
家族など血縁者は、
(1)似た遺伝的背景を持っている
(2)同じような生活環境の中で過ごすことが多い
といった特徴があります。このことから、似た病気にかかるリスクが高まることがあるのです。よって家族歴を知ることは、ご自身が特定の病気の発症リスクが高いかどうかを知る手がかりになります。

■家族歴から発症リスクを推測できる病気
・がん(乳がん、大腸がん、肺がん など)
・脳の病気(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、アルツハイマー病 など)
・心臓の病気(心筋梗塞、狭心症 など)
・生活習慣病(糖尿病、高血圧、脂質異常症 など)

さらに、病気の中には生まれつき特定の遺伝子の変化が原因で発症するものがあり、その発症リスクを知る上でも家族歴は重要な情報になります。例えば、がんの中でも、がんを発症しやすい遺伝子の変化(体質)を親から受け継いだことにより発症する「遺伝性のがん」があります。遺伝性のがんのひとつであるHBOC(遺伝性乳がん卵巣がん)では、ご自身が遺伝を受け継いでいるかどうか、その可能性をチェックする方法として、「ご自身が乳がんと診断されていて、かつ血縁者に乳がん、または卵巣がん、膵臓がんと診断された方がいる」といった内容があります(※2)。

がんの人が多い家系を「がん家系」と表現することがありますが、どのような家系ががん家系なのかという正確な定義はなく、仮にがん家系だからといって必ずしもがんを発症するわけではありません。また、そうした遺伝要因によって発症する病気は全体からすると多くなく、ほとんどは喫煙や飲酒などの生活習慣や環境要因、ストレス、感染などの後天的な要因の影響が大きいと考えられています。

このように、家族歴からだけでは、将来特定の病気にかかると断定することはできませんが、発症リスクが高いかどうかを推測する手がかりにはなります。家族歴は病気の診断や予防に役立てることができるのです。

家族歴の「家族」とは、どこまでの親族を指す?

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問診票の家族歴は、「第1度近親者」と「第2度近親者」までの情報を記載するのが一般的です。「第1度近親者」は両親や子ども、兄弟姉妹を指し、遺伝情報を50%共有しています。「第2度近親者」は祖父母、おじ、おば、姪、甥、いとこなどです。遺伝情報は25%共有しています。「近親者」という言い方は遺伝情報を共有しているかどうかを軸にした表現であり、法的な親族関係の近さを表す「親等」とは異なることを知っておきましょう。

家族の健康を守るために、家族歴を知ろう!

問診票では「第2度近親者」までの家族歴を記入することが一般的ですが、身近な家族や親族の間でも、かかった病気のことまでは話したことがない、詳しくは聞いていないといった方も少なくありません。ですが、ご家族で話しをすることは、将来の病気のリスクについて考えるための第一歩です。

まずはご自身の両親や兄弟姉妹の病歴などは確認し、祖父母や叔父、叔母などの情報は、両親や兄弟姉妹を通じて入手しておくとよいでしょう。親戚が集まるイベントなどがあれば、そうした機会も利用できます。ただし、病気について話したくない人もいるので、相手の気持ちに配慮することが大切です。母子手帳やおくすり手帳などがあると、昔のことを思い出しやすくなります。

家族で話した内容は、整理して具体的に書き出しておくと、自分や家族が医療機関を受診する際に役立ちます。また、将来かかるリスクが高そうな病気が見つかったら、自分のライフスタイルを見直したり、健診を受けたりすることで、病気の予防や早期発見に活かすこともできます。家族歴を知り、家族の中で情報を共有することが、お互いの健康を守ることにつながるのです。

多くの病気は早期の段階では症状が乏しいため、早期発見のためには定期的に健診を受けることが大切です。家族で健康について話したあとは、家族みんなで健診を受けてみてはいかがでしょう。当クリニックでは気になる疾患に対応する人間ドックのコースを各種ご用意しておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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森山 紀之

医療法人社団進興会 理事長

1973年千葉大学医学部卒。
元国立がん研究センター がん予防・検診研究センター センター長、東京ミッドタウンクリニック常務理事 兼 健診センター長を経て、現職。

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