認知症になりやすい人の特徴とは?認知症の予防に向けて今からできること
年を重ねると誰でも発症する可能性のある認知症。
家族や身近な人が認知症になることも含め、多くの人にとって身近なものになっています。認知症は様々な要因が複合して発症するといわれており、中には対策が可能な要因もあります。
今回は、認知症の発症リスクを高める要因や早期発見のためにできることについて解説します。
目次
増え続ける認知症と軽度認知障害(MCI)
内閣府の「高齢社会白書」によると、認知症の高齢者数は443.2万人、軽度認知障害(MCI)の高齢者数は558.5万人で、65歳以上の高齢者の4人に1人以上が認知症やMCIであると推計されています(※1)。
人口の高齢化に伴い、その数は今後も増え続けると考えられ、認知症・MCIの予防は多くの人にとって、今から考えるべき課題となっています。
「認知症」は、脳の病気や障害などに原因によって、脳の神経細胞の働き・認知機能(記憶、判断力など)が低下し、日常生活に支障をきたす状態をいいます(※2)。
一方、「軽度認知症(MCI)」は、認知機能のレベルが年相応よりも低下しているものの、日常生活に支障をきたすほどではない状態を指します。MCIは認知症の一歩手前の段階と言えますが、MCIの人が必ずしも認知症になってしまうわけではありません。MCIと診断された人が認知症になる割合は1年で1割程度とされており、食事に気を使い、運動や認知トレーニングをすることで健常な状態に戻る可能性が高くなります(※3)。
認知症の原因・症状
認知症の原因には多くの病気があり、最も多いのは「アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)」で、認知症全体の半数以上を占めます。次に多いのが、脳梗塞や脳出血によって引き起こされる「血管性認知症」です。(※4)これらの認知症の病気は、一度発症すると残念ながら現在の医療では根本的に治すことができません。
一方、認知症の中には「治る認知症」もあります。例えば、甲状腺機能低下症やビタミンB12欠乏症、脳腫瘍などの病気は認知症の症状を引き起こすことが知られており、適切な治療を受ければ治る可能性があります。治療で治せる認知症を見落とさないためには、早期に発見し診断につなげることが大切です。
また、認知症の症状としては、記憶機能や言語、注意といったさまざまな認知機能の低下があります。例えば「アルツハイマー型認知症」の場合、多くは記憶障害(もの忘れ)から始まるといわれています。歳をとると誰でも、もの忘れを経験しますが、加齢によるもの忘れは体験したことの“一部分”を忘れてしまうのに対して、認知症のもの忘れでは体験したこと“すべて”を忘れてしまうという違いがあります。そのため、認知症になると「何度も同じことを言ったり聞いたりする」「食事をしたのにまだご飯を食べていないと言う」など、同じ言動を繰り返すといった症状があらわれます。
認知症で低下する認知機能(※3)
- 記憶機能
- 見当識:時間や場所、人物などの周囲の状況を正しく認識する能力
- 言語:言葉を理解したり表出したりする能力
- 複雑性注意:注意力を維持したり、振り分けたりする能力
- 実行機能:計画を立て、適切に実行する能力
- 知覚・運動:正しく知覚したり、道具を適切に使用したりする能力
- 社会的認知:人の気持ちに配慮したり、表情を適切に把握したりする能力
認知症が進行すると、認知機能障害だけでなく、生活がうまくいかなくなる生活機能障害が生じやすくなります。食事やトイレなどの基本的な日常生活の動作と比べて、思考力やコミュニケーション能力が必要な複雑な生活関連動作は、認知症の早期から低下しやすいといわれています。一例としては「手順に沿って調理しながらお皿を準備する、片付ける」といった複数の動作が同時に必要なものや、買うものを記憶しつつお店の人とのコミュニケーションも必要になる買い物などが該当します。
認知症になりやすい人とは
認知症における最大の発症リスクは加齢です。認知症は加齢に伴って発症しやすくなり、特に70歳以上では患者数が増大します。加齢のほかに遺伝性のリスク因子などもありますが、これらは対策を講じることができない要因です。一方、生活習慣や特定の病気などのリスク因子は対策を講じることが可能です。対策が可能な認知症リスクとして、下記9つが挙げられています。
対策可能な9つの認知症リスク
- (小児期)
- (中年期)
- (高齢期)
- (※1)内閣府, 令和6年版高齢社会白書
- (※2)知っておきたい認知症の基本(政府広報オンライン)
- (※3)国立長寿医療研究センター, あたまとからだを元気にするMCIハンドブック
- (※4)平成24年度認知症対策総合研究事業「都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応」(研究代表者 筑波大学 朝田隆)
- (※5)Livingston G, et al.: Lancet. 2017; 390: 2673-2734
・教育期間の短さ
・難聴
・高血圧
・肥満
・喫煙
・うつ病
・運動不足
・社会的孤立
・糖尿病
これらのリスク因子に多く該当する人ほど、認知症になりやすいと考えられます。生涯にわたって9つのリスク因子をコントロールし、脳の健康状態を改善することができれば、認知症の発症を予防できる可能性があるといわれています。(※5)。生活習慣の改善をはじめ、人との交流を増やしたり、外出の頻度を高めたりすることも大切です。
認知症の予防に向けて今からできること
自分や家族が認知症ではないかと心配になったら、まずはかかりつけ医に相談してみましょう。「もの忘れ外来」「認知症外来」などの専門の窓口を設けている医療機関もあるので、そうした診療科の受診を検討するのもよい方法です。上述のように、「治る認知症」もあるため、まずは適切な診断を受けることが大切です。気になる症状がある場合は、早めに専門医を受診しましょう。
認知症の中でも、「アルツハイマー型認知症」は長い時間をかけて少しずつ進行していく病気です。認知症になる前の軽度認知障害(MCI)をできるだけ早く発見し、適切な対策を講じることが健常な状態への回復や認知症への進行を遅らせるカギになります。
「ヘルスケア脳検査」
そのためには、自分の認知機能や脳の状態を定期的に知っておくことが有用です。
当クリニックでは、脳の健康状態をチェックし、将来の認知症リスクに備えるための「ヘルスケア脳検査」を実施しています。記憶をつかさどる脳の「海馬」の状態をAIで解析する「Brain Life Imaging®」と認知機能の低下が進んでいないか測定する「CQ test®」の2つの検査を組み合わせた、新しい検査です。認知症の家族がいる方や、認知症のリスク因子に多く該当する方は、早くから自分の脳の状態を把握し、認知症の予防に取り組むことをおすすめします。脳ヘルスケア検査について詳しく知りたい方は、当クリニックまでお気軽にお問い合せください。
「MCIスクリーニング検査プラス」
また、MCIのリスクを調べる検査(MCIスクリーニング検査プラス)を実施しています。
この検査は採血のみで簡単に行うことができ、各種人間ドック・健康診断にオプションとして追加することが可能です。ご自身はもちろん、ご家族について少しでも気になるサインが見られる場合には、早めの検査を検討してみてはいかがでしょうか。
参考文献
人間ドックコース・料金
当クリニックでは皆さまのご要望に柔軟に対応できるよう、多様なコースをご用意しています。
どのコースを受けたら良いかわからない場合は、お気軽にご相談ください。
記事監修
森山 紀之
医療法人社団進興会 理事長
1973年千葉大学医学部卒。
元国立がん研究センター がん予防・検診研究センター センター長、東京ミッドタウンクリニック常務理事 兼 健診センター長を経て、現職。